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大工の決まりごとは何百年前からの決まりなんやから、それを守らんような人間は商売できへん。 | |||||
京の町家は夏の過ごしやすさを旨とした。だがその普請は寒さが厳し冬場に行われる。「寒普請といって、正月前に荒壁をつけ、寒の間に工事を進めるんです。冬の仕上げなら木も焼けないし、木の”はしゃぎ”も少ないからです」と、アラキ工務店の大工の棟梁、荒木正亘さん。 | |||||
木はゆっくりと乾燥させないと暴れる。つまり”はしゃぐ”。 そこで秋に建ち上げ、乾燥がゆっくり進む冬の間に仕事を進めた。 冬の京都では、凍てつく日もある。 そこで正月前には荒壁をつけて乾燥を済ませ、これを進捗の目安とした。 「そして梅雨と夏を越してやると木も安定してくる。昔はこんふうに家もゆっくりと普請したものです」 大工の決まりごとはこのほかにも数多く存在する。 木は自然のままに立てないといけない。逆木はダメだし、横架材も南か東に末口をもってくるようにする。これも、将来木が”はしゃぐ”のを防ぐためだ。 |
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「親父は『木殺しの勇さん』とあだ名される木の扱いにたけた大工だった。 親父がきざんだ柱は見事なくらいスッと納まったもんです」 走り庭の火袋に組まれた柱と梁、桁は町場大工の腕の見せどころであった。 仕口が丁寧に仕上げられた継手や差口は時を経ても狂うことがない。 |