
○:町家・数寄屋関連 ●:社寺関連 (※50音順) |
○網代(あじろ) | ○一文字瓦葺き(いちもんじがわらぶき) | ●花頭窓・火頭窓(かとうまど) | ||
●唐破風屋根(からはふやね) | ○唐紙(からかみ) | ○下地窓(したじまど) | ||
○準棟纂冪(じゅんとうさんぺき) |
○袖垣(そでがき) | ○突上窓(つきあげまど) | ||
○名栗(なぐり) | ○躙口(にじりぐち) | ○ばったり床几(ばったりしょうぎ) | ||
○虫籠窓(むしこまど) | ○無双窓(むそうまど) |
「あじろ」とは元々魚を取る為に網の代わりに水中に設置した竹組みの仕掛けのことをいう。 日本では古くより建物の壁となる編み細工の板として、同様に竹や樹皮を編んだものが用いられた為、このように呼ばれるようになったと言われる。 建築そのものが自然の一部であるような雰囲気が好まれる茶室や数寄屋建築において特に好んで用いられる。 |
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杉やサワラ等を薄く割った枌板(へぎいた)や竹を薄く割ったものを編み上げ、これを天井や建具に貼って用いる。 縦横だけでなく斜め方向にも編むことで、矢羽根模様・石畳模様・亀甲模様など、さまざまな模様をつくることができ、ここへ反射した光のグラデーションが美しい。 |
「一文字」とは漢字の「一」の字のように真っすぐそろっているという意味。 日本建築の屋根にふかれる伝統的な建築材料である瓦のなかでも、「一文字瓦」は軒先の最前列の瓦を、真っすぐ隙間なくそろえて葺くことができる種類のもの。 この瓦には装飾の垂れがついており、屋根に葺くとこの下端が一直線にそろい、端正な雰囲気をつくることができる。 |
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粘土を成形したものを焼成する過程で高温により瓦がわずかに歪むので、職人はあらかじめ一つ一つの瓦のかたよりを吟味して真っすぐになるよう並べる。 |
主に寺院建築に設けられる形状の窓で、枠の上部の曲線は炎をかたどっているといわれる。 12世紀以降、禅宗様の建築様式として中国から日本へ伝わり、後に寺院建築だけでなく住宅建築の書院の床の間にも用いられるようになる。 窓の片側には紙障子を入れて開け閉めし、火頭窓を通して切り取られた庭の風景を楽しむことができる。 枠は黒く漆で塗ることが多い。 |
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中央部をふくらませ両端部をへこませて、全体を曲線状にした屋根の形状のこと。 寺社建築の向拝(本殿を拝む正面の場所)や玄関など、目立つところに装飾的な目的で用いられる。 「唐」という語は「中国風」という意味だが、この屋根は日本に固有の形状で、「唐」という言葉は優雅さや威厳を意味している。 |
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かつて日本の上流階級の人々は絵を描いたり書をするための紙を中国から輸入していた。 その中には蝋や顔料を用いて紙に装飾的な文様を入れるものがあった。 日本での需要が増えるにしたがって中国の紙にならったものが国内でも生産されるようになり、一方で紙の用途も建具に貼る等広がっていった。 装飾的な文様も次第に中国風のものに限らず、日本の豊かな自然を表現したものが多く考えられた。 文様はパターンが彫られた板に絵具や顔料等をつけ、そこへ紙をのせて刷り上げるという方法で作られる。 |
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この唐紙は使う人の生活感覚や社会的地位によって好まれる文様が異なっていた。例えば、公家の住宅では鶴や桐の文様、寺社では雲、町衆では波やひょうたん、桜や雪などの四季折々の文様がそれぞれ好まれた。 桂離宮の襖には、雲母の粉で桐の模様が刷られており、庭から室内へ差し込む光の加減でほのかに浮かび上る様子が美しい。 |
あたかも壁の一部へ土を塗らずにおき、残された壁の下地を窓としたように見せかけた作り方のこと。 一説によると千利休(1522-1591)が荒れ果て崩れかけた田舎家の壁を見て、侘びを大切にする草庵の茶室で取り入れることを思いついたという。 実際には土をつける部分と窓の部分とは下地を別に分けて、素朴な風合いが現れた材料を吟味して下地を組むことが多く、一般的に皮を残した葭(あし)を1本から5本不揃いに並べ、格子に組み、ところどころ藤の蔓(つる)で巻く。 窓そのものが自然の一部であるかのような表現である。 |
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「準棟纂冪」とは「棟木に準じたところに集まって覆うようにかかる」といった意味で、建築においては町家の吹抜けの上部にかかる丸太組みの壮大な空間のこと。 かつて炊事の際に出る煙や湯気を家の外に出すために多くの町家で吹き抜け空間が設けられた。 太い丸太の梁組はこの大空間を堅固に支えるためのものであるだけでなく、職人達が自らの技術をアピールする絶好の場所でもあった。 壁と壁をつなぐようにして渡された梁は、高い位置に入るものほど細い丸太が選ばれ、下から見上げた際に遠近感が強調されて見えるようになっている。 |
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玄関の脇や庭に、目隠しや装飾のためにおかれる小さな垣根。 その形が日本の伝統的な衣類である着物の袖に似ている為、このようによばれる。 あたかも自然の風景のミニチュアであるかのように作られる日本の伝統的な庭において、袖垣は単なる目隠しとしての機能だけでなく、自然のものを集めてそっと束ね上げたその簡素な造形により、自然との一体感を表現する。 材料には黒文字や萩や竹などが用いられ、編み方・束ね方の違いで、玉袖垣、黒穂袖垣、建仁寺垣等の種類がある。 |
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茶会に参加する全ての人が心穏やかに過ごすことができるように、茶室の中は薄暗く、また同時に部屋の隅々まで光が届くようにつくられる。 自然光の美しさを生かすために、茶室の窓の配置は細心の注意をもって吟味されるが、なかでも突き上げ窓は、掛込天井の屋根の一部を跳ね上げて開口をつくる簡易的な天窓である。 野地板の一部が四角く穴を切り取られ、その上から木製の蓋が被さるように置かれて内部へ雨が入らないように工夫され、茶会で使う際だけ蓋を持ち上げて竹の棒で支える仕組みになっている。 |
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かつて山から伐り出した栗の丸太が建築材料として長持ちするように、腐りやすい辺材を取り除き、丈夫な芯材をのこすために斧で斫られることがあった。 この丸太を斫った刃物の跡が素朴さを表現するパターンとして茶人から好まれるようになり、柱や床板の表面に装飾的に用いられる。 曲がった柄の先に鉄の刃がついた手斧(ちょうな、アッズ)を振りかざして材木を叩くように加工するため、「なぐり」と呼ばれる。 刃物の形状や斫る間隔等の違いで、荒々しいものから端正な表情まで、何種類もの幾何学的なパターンを作り出すことができる。 |
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来客が茶室へ出入りするために設けられる非常に小さな出入り口。 その大きさは元来小柄な日本人が屈んで体を擦りいれてようやく建物の中へ入れるほどで、およそ高さ68センチ幅63センチ程度である。 出入りのために必ずしも機能的とは言えないこの極端に小さな窓は、千利休(1522-1591)が京都府の大山崎に建てた待庵で最初に用いられたと言われる。 その意図は、茶会に招かれた武士階級の者が茶室の中に自らの権力の象徴である刀を持ち込めないようにするためとも、また体を屈ませて頭を低く垂れて入る動作に、日常世界でもっている我を鎮め、無垢な精神へ立ち返るという意味を込めているためとも言われる。 入口の戸にはあえてアンバランスに並べた杉の板を張るが、これは元来ありあわせの雨戸からの一部を小さく切り取って粗末に作ったことの名残である。 |
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町家の正面の庇の下に設けられることの多い、造りつけで折り畳み式の縁台のこと。 町家に住みながら商売をする住人がこの上に自らがつくる品物を並べ、通りを歩く人に見てもらえるように設けた。 夕方になると品物を家の中に片付けて棚を仕舞い、朝になると再び棚を出して品物を広げる。 「ばったり」という語は、重量のある縁台を上げ下げする際に出る音を表現した擬音語である。 |
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通りに面した町家のロフトの壁に設けられることの多い、土塗りで仕上げられた格子窓のこと。 かつては物置や使用人の部屋として使われていた天井高の低い二階部屋の内部へ光を入れるために設けられ、外部から見た際には周囲の土塗り壁と調和したファサードとなる。 格子で構成された全体の窓の形は、長方形や楕円形、中国の団扇を象ったハート形のものまでさまざまあり、縁を盛り上げて装飾的にすることも多い。 部屋側に木製の建具を入れて開け閉めすることで、外部と部屋内を仕切る。 |
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「無双」とは、表と裏が同じ姿という意味。 幅広の薄板を格子のように等間隔の隙間を空けて固定し、さらにその格子の隣に並べて同様の形状に組まれた建具をはめこむ。 この建具は可動式で、左右に動かすことができる。 板格子同士が重なる時には開口が生まれて換気や採光が可能になり、板格子が互いにずれて位置するときには戸締りされた状態になる。 無双窓は座敷や縁側の欄間、茶室に付属する水屋の窓にたびたび用いられ、形状も直線的なものから波をかたどった曲線的なものまでさまざまな意匠がある。 |
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